本文へジャンプします。

IMAGINE ONE ASIA

ここで、ひとつに。

  1. ホーム
  2. ここで、ひとつに。
  3. 中野修源さん、経清さん(柔道)インタビュー【第2回】

2025年02月17日

中野修源さん、経清さん(柔道)インタビュー【第2回】

中野修源さん、経清さん(柔道)インタビュー【第2回】
東日本大震災、大学時代から受けた批判など困難を乗り越えオリンピックを目指してきた修源さん(28)、経清さん(28)の「中野兄弟」。

惜しくも東京2020、パリ2024の2大会の出場は逃しましたが、集大成となる2028年のロサンゼルス大会へ向け、鍛錬の日々が続きます。

第2回では、中野兄弟が愛知・名古屋2026のアジア大会をどのような機会として捉えているのか、伺いました。

 
■アジア大会を五輪につなげたい

―お二人にとってアジア競技大会はどのような大会ですか。

修源さん(以下、修) 私たちにとって、アジア大会はオリンピックに次ぐ大きな試合です。オリンピックの出場資格はポイント制で決まっていて、体重別で各階級の世界ランキング上位17カ国に与えられるシードの選手のほかは、大陸ごとに10人の出場枠が割り振られ、全階級を通して大陸ごとにトップ10位の選手に出場資格が与えられます。私たちは11位と12位でパリオリンピックの出場を逃しました。オリンピックに出られなかった分、アジア大会でという思いはより強くなっています。

―アジア大会では、オリンピック出場につながるポイントが得られるのですね。
修 はい。自分たちの年齢からいって、2028年のロサンゼルスオリンピックが集大成の大会になると思います。ポイントが計算されるのはオリンピックの2年前の大会からになるので、愛知・名古屋2026はロスへのポイントの最初の試合という、重要な大会になると思います。
 
しかも、愛知・名古屋2026は地元日本であるわけですから、家族に自分たちが戦う姿を見せられる貴重な機会です。そういった意味でも特別な大会です。

―日本では、なかなかそういう機会はないのですか。
修 日本で行われる大会は年に1度のグランドスラム東京ぐらいしかありません。ポイントを得られるオリンピック予選大会は、ほとんどがヨーロッパ圏で開催されています。


 
(本人提供)
■Judoは世界スポーツ

―日本発祥の柔道は、今や非常に国際的なスポーツなのですね。

経清さん(以下、経) そうです。今、国際柔道連盟の本部はハンガリーにあります。パリオリンピックの最終選考は6月に3週間連続で世界を転戦する形で行われました、まずタヒチでのオセアニアオープン、そしてその翌週にはコートジボワール、さらに2週間後にはペルーで大会が行われました。
 コートジボワールの大会が終わった翌日の夜にはペルーへ向けて出発しなければいけない過酷さでした。日本大使館の人が大会を見に来ていて、日本の名前の選手がいるという事で声をかけてくれて、翌日、近くの海で皆さんとご一緒する機会をもらう経験もしました。


―現在はお二人のどちらを拠点にされていますか。

経 拠点は日本とフィリピンの両方にあります。フィリピンには2~3か月に1度、2、3週間行っています。でも、オリンピックの予選がはじまるとヨーロッパを転戦する日々になっていきます。


―アジアの中ではどこの国が強いのでしょうか。
修 まずは日本、続いて韓国、続いて中央アジアのスタン系と言われる国も強いですね。

経 スタン系の国はヨーロッパ寄りのスタイルで、他のアジアの国とは柔道のスタイルが異なりますね。日本は一本をとるスタイルですから。


 
(本人提供)
■日本文化、人間形成が魅力

―柔道そのものの魅力は何でしょう。

修 日本人って海外でとても素晴らしい人たちだと思われているんですよね。礼儀が正しく、美しい国と。柔道は、そうした日本のいいところである日本文化を深く学べます。実際、柔道の世界では試合中は激しく戦っても、試合が終わればスポーツマンシップでいがみ合いはありません。柔道というツールで、各国の仲間とつながることができます。

経 人間形成の1つですよね。試合が終われば、仲間としてスポーツを通じて出会える人たちです。

 


(本人提供)
■愛知・名古屋で魅力発信を

―愛知・名古屋ではどんなことを楽しみにしていますか。

修 実は名古屋にはいったことがないのですが、食事が楽しみです。ウナギが美味しそう。選手も食事のために頑張ろうっていうのはあると思います。

経 「日本というと東京」と海外では思われていますが、東京でも大阪でもなく、名古屋で行われるっていう事も新しい日本の魅力を海外に知ってもらえていいですよね。


―アジアパラ大会についてはどう思われますか。

経 日本のメディアはパラ大会を取り上げることが少ないですよね。もっと試合が見られるといい。ハンデがあるアスリートもスポーツで輝いている。日本の企業でも、障がい者の雇用を充実させる時代になってきています、「パラ」という(健常者と別の大会とする)くくりの無い時代が来るぐらいになるといいと思います。

修 国籍という部分で、われわれも壁にぶつかりました。一人間として、国籍だとか体の状態だとかに関係なく、アスリートの活躍が称賛される時代になってほしいですね。

 

(本人提供)
(本人提供)


聞き手は金井塚文人が担当しました(年齢は取材時)。
 
中野兄弟(なかのきょうだい)プロフィール

岩手県野田村出身の双子で、日本人の父とフィリピン人の母を持つハーフアスリート兄弟。1996年12月29日生まれ。66㎏級の修源(しゅうげん)さん、73㎏級の経清(けいせい)さんともにフィリピン国籍を有しており、同国代表として国際大会での表彰台経験がある。日本とフィリピンを行き来しながら技を磨く。
2016年のリオデジャネイロ五輪に同国代表として出場した亨道(こうどう)さんは兄。