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  3. 【第二回】苦しい時こそチャンス。「絶対に負けない!」と攻め続ければ壁を超えられる(名古屋ウィメンズマラソン2024 3位・東京2020オリンピック マラソン女子 日本代表 鈴木亜由子選手)

2024年04月23日

【第二回】苦しい時こそチャンス。「絶対に負けない!」と攻め続ければ壁を超えられる(名古屋ウィメンズマラソン2024 3位・東京2020オリンピック マラソン女子 日本代表 鈴木亜由子選手)


ケガに悩まされ続けた高校時代の苦境を乗り越えて大学へ進学すると、日本代表の常連として名を連ねるようになった鈴木亜由子選手。陸上トラック競技の長距離走者として、数々の国際大会に出場を果たします。

そして周囲の期待を背に、2018年には満を持してマラソンへ初参戦。マラソンデビュー戦で見事優勝を果たし、華々しいデビューを飾りました。

第二回のインタビューでは、国際大会の思い出やマラソンへのチャレンジを決めた時の心境、日の丸を背負うことへの思いなどを本音で語ります。







 
Interviewer
大学1年生の時には、日本代表として世界ジュニア選手権に出場され、5000mで5位入賞を果たしました。

鈴木亜由子選手
初の海外レースでノープレッシャーだったということもあり、とにかく楽しかった思い出ばかりです。日本代表メンバーに選ばれた時も、大会のこと自体あまりよく知らなくて「そんな大会あるの?」「選ばれたんだ!」と、知らせてくれた方が拍子抜けするほど楽天的な反応をしたことを覚えています。
遠征メンバーは同世代の選手ばかりでしたし、豊橋で同じ陸上クラブに所属していた選手と同部屋だったこともあり、楽しみながらも多くの刺激を受けました。得るものばかりの大会だった気がします。

Interviewer
初めての海外挑戦でしたが、緊張しなかったのですか?

鈴木亜由子選手
海外の選手と一緒に走れるというわくわく感に満たされて、気付いたらレースが終わっていたという感じです(笑)。
改めて考えてみると、当時から、国際大会の方が緊張せずに走れているような気がします。格上の選手が多いので、挑戦者の気持ちで、プレッシャーを感じることなく挑めるからかもしれませんね。








 
Interviewer
海外経験が豊富な鈴木選手。もう一度行ってみたい国や印象に残っている大会はありますか?

鈴木亜由子選手
合宿で訪れたスイスのサンモリッツという地域は、すごく快適で、もう一度走ってみたいなと思います。

印象に残っている大会は、2015年に北京で開催された世界陸上です。怖いもの知らずで向かっていった大会でしたが、常に入賞ラインを見据えながら予選を勝ち上がることができ、予選よりも決勝へと、レースごとに自分の成長を感じられる大会でした。
最終的には、わずか0.29秒差で入賞を逃す悔しい結果でしたが、記録は自己ベストを更新。世界で戦っていける手応えを感じられるきっかけになった大会でもありました。

Interviewer
満を持して2018年には初マラソンに挑戦。その時の心境は?

鈴木亜由子選手
マラソンにはずっと興味を持っていました。ただ高校時代にケガが続き、実業団に入ってからも故障を繰り返していたので、私のような選手がマラソンで勝負できるのだろうかという不安や怖さがあったのも事実です。
不安がありつつも反面、トラック競技で世界陸上やオリンピックなど国際大会を数多く経験するなかで、あと一歩入賞に手が届かないというジレンマも募っていて。決断までに少し時間はかかりましたが、マラソンでもっと自分の可能性を広げたいという思いが次第に大きくなっていきました。

挑戦したいという思いと、高みをめざせるという自分を信じる気持ち。両方が湧き上がり、転向することに決めました。








 
Interviewer
マラソンの挑戦へ向けて、最終的な決め手になったポイントは?

鈴木亜由子選手
監督にかけられた言葉です。「マラソンで結果を残すために大切な要素は、向いているか向いていないかではなく、やりたいという思いが強いかどうかだよ。それだけの覚悟がないと、一生できないよ」と言われて。その言葉を聞いて「私はやりたい!だから大丈夫だな」と気持ちが自然に動いたので、挑戦する決心をしました。

Interviewer
鈴木選手が感じる、トップアスリートの条件や世界で活躍する選手の共通点は?

鈴木亜由子選手
苦しい練習を重ねていることは、誰でも同じ。みんな本当に限界までトレーニングしていると思います。あとはスタートラインに立った時に、頑張ってきた自分をどれだけ信じることができるかどうか。「これだけやってきたんだ」と自信を持てる人は強いと思います。





 
Interviewer
レース中の苦しい局面ではどんなことを考えていますか?

鈴木亜由子選手
以前、同じ東海地区出身の大先輩に「辛くなってからが本番だよ」と言われたことがあるんです。その言葉を胸に、苦しくなった時は「今こそ強くなるチャンス!」と自分に言い聞かせるようにしています。
身体が苦しくなると、脳がどうしてもブレーキをかけてしまうので、そのストッパーを取り払うためのメンタルコントロールが重要です。苦しさをいかにポジティブに捉えるか。「絶対に負けない!」という強い思いで攻め続けることで、壁を超えられるのだと思います。

Interviewer
日の丸を背負うことへの特別な思いはありますか?

鈴木亜由子選手
日の丸を付けることには、すごく憧れがありました。特にオリンピックは、幼い頃から私にとって天国と同じくらい実態のないものでした。
「どんな人があそこに立てるのだろう」という雲をつかむような感覚で、まさに夢の舞台。だから、初めて世界大会に出場した時はすごくうれしかったです。
ただ、今は日本記録更新という壁を打破しなくてはという思いがあります。日本記録を塗り替えて、世界で戦う盤石な土壌を築きたいと思っています。








 

レース中、苦しくなった時は「今こそ強くなるチャンス!」と自分に言い聞かせるようにしています。

身体が苦しくなると、脳がどうしてもブレーキをかけてしまうので、そのストッパーを取り払うためのメンタルコントロールが重要です。苦しさをいかにポジティブに捉えるか。「絶対に負けない!」という強い思いで攻め続けることで、壁を超えられるのだと思います。








長距離走者として5000m、10000mと世界を相手に闘い続けてきた鈴木選手。周囲の期待も高まる中、2018年にはマラソンへの初参戦を果たします。マラソン挑戦への後押しとなったのは「向いているかどうかではなく、やりたいかどうかが大切」という監督の言葉。
挑戦したい、さらに高みをめざしたい。アスリートとして抗うことのできない本能に突き動かされるように、鈴木選手はマラソン選手として走り続けています。

「苦しさをいかにポジティブに捉えるか。絶対に負けないという強い思いで攻め続けることで、壁を超えられるのだと思います」と語り、自分の限界に挑み続ける鈴木選手。その凛とした姿に、心を揺さぶられました。

第三回のインタビューでは、地元である愛知県で開催される愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会への思いを直撃します。


※このインタビュー記事の内容は2023年12月時点のものです



<第三回 2024年4月30日(火曜日)掲載記事につづく>