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2024年01月23日

【第二回】波の影響や水温など海外での経験は財産。仲間との交流も刺激に(東京2020オリンピック・第19回アジア競技大会 競泳男子 バタフライ日本代表 川本武史選手)

50mバタフライ(長水路・短水路)、100mバタフライ(短水路)の日本記録保持者として、日本競泳界に名を刻む川本武史選手。ドルフィンキックを武器に、大学時代から本格的にトレーニングを始めたというバタフライでトップスイマーへと駆け上がり、今や世界の名立たる選手も一目置く存在です。国際大会での豊富な経験、海外でのトレーニングなど、世界を舞台に活躍を続ける川本選手が、コンディションをキープし、最高のパフォーマンスを発揮するために心がけていることとは。
第二回のインタビューでは、世界での戦い方や心身を整える秘策をうかがいます。




 
Interviewer
国内大会と国際大会の違いで苦労する点はどのようなことですか?

川本武史選手
水泳特有の話になってしまうのですが、波の影響が一番大きいです。僕は基本的にスタートダッシュから前半に差を付けて、ターンしてからの後半を逃げ切るというレース展開が多いのですが、海外の選手と戦う時は、前半から自分より速く飛び出す選手が大勢います。そのため、自分より前を泳ぐ選手から波の影響を受けて苦戦することがあります。
普段から他の選手の後ろにつき、波の影響を考慮しながら泳ぐ練習もしますが、一番の対策は本番で経験を積むことです。海外で戦う機会を増やして、多くの国際舞台を経ながら感覚を磨くしかないですね。









 
Interviewer
海外での試合では、会場の雰囲気の違いも感じますか?

川本武史選手
もちろん感じます。一つは会場の規模感です。国際大会になると会場自体のスケールが大きいので、視覚的な開放感があります。もう一点は温度です。プールによって室温や水温が異なるのですが、海外だと日本のプールよりも水温が1~2度低いことが多いので、感覚の違いに慣れる必要があります。

Interviewer
海外の強化トレーニングにも参加されていますが、他国の選手とのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

川本武史選手
所属企業が支援しているグローバルチームトヨタアスリート(GTTA)が在籍するシンガポールの施設で強化トレーニングに参加しました。その時に一緒に練習した海外の選手と連絡先を交換して、今でもSNSなどで連絡を取り合っています。その選手が日本でトレーニングしたいということで、愛知県のプールで一緒に練習したこともありますし、もし僕が希望すれば、シンガポールのトレーニングに参加させてもらうこともできると思います。お互いに意見や情報を交換できる選手が海外にいることは、自分にとって刺激にもなり、すごくプラスになっています。




 
Interviewer
印象に残っている国際大会はありますか?

川本武史選手
2020年と2021年に出場したISL(International Swimming League)です。この大会は、水泳クラブ世界一をかけてチームで戦う団体戦なのですが、他の大会以上に海外選手と密に交流ができる特別な大会です。
ただ、初めて出場した2020年はコロナ禍での実施ということもあり、イレギュラーの連続でした。選手は1カ月くらいホテルに隔離され、一歩も出られないという状況に。さらにヘッドコーチはアメリカ人なので、練習内容や指示もすべて英語。多少の聞き取りはできるものの、海外でコンディションを整えることの難しさを改めて痛感した大会でしたね。








 
Interviewer
海外遠征時に心がけていることはありますか?

川本武史選手
やはり食生活ですね。僕はあまり苦手な食べ物がないので、現地ならではの料理を楽しむことも多いのですが、それでもお守り感覚でお米を持って行きます。例えば主食がパスタとかに置き換わってしまうと、普段のエネルギー量との差が読み切れず、栄養バランスが崩れてしまうという不安があります。食事面で不安がないかどうかという点は心の余裕にもつながると思うので、単にフィジカル面のことのみならず、心理面での安心材料としてもお米は常に持参しています。

Interviewer
トップクラスの選手と接する中で、世界の舞台で活躍するための強さの秘密や共通点はどこにあると感じますか?

川本武史選手
何か一つ、誰にも負けない武器を持っているということでしょうか。もちろん技術面や体力面のみならず、メンタルの強さもその一つだと思います。例えば、僕の場合はドルフィンキックです。スタートやターン直後に両足をそろえて上下させ、足の甲で水を蹴りながら強く前進するのですが、そういう海外に通用する強みがあると、いざという時に自信を持って戦うことができます。




 

世界で活躍するトップアスリートの共通点は、誰にも負けない武器を持っていることではないでしょうか。技術面や体力面、メンタル面など、海外に通用する強みがあることで、いざという時に自信を持って戦えると思います。




シンガポールでの強化トレーニングを経験し、海外の選手と肩を並べて練習することで、ワンランク上のステージを見据え始めた川本選手。
国際水泳リーグISL参戦、日本選手権大会での日本記録樹立、そして念願の東京2020オリンピック出場を果たすなど、持ち前の力強い泳ぎで結果を手繰り寄せていきました。学生から社会人アスリートへ。苦難に直面しながらも、頂点を見据える川本選手の闘争心を覚醒させたのは、豊富な国際経験に裏打ちされた自信と、勝ちにこだわる強い意志なのかもしれません。

第三回は、愛知県出身の川本選手に、故郷である愛知県での思い出や、地元で開催される愛知・名古屋アジア競技大会に寄せる思いについてうかがいます。



<第三回 2024年1月30日(火曜日)掲載記事につづく>