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  3. 【第二回】国際大会で最高のパフォーマンスを発揮する鍵は“普段通りの準備”(2020年東京オリンピック ラグビー男子 日本代表 彦坂匡克選手)

2023年07月18日

【第二回】国際大会で最高のパフォーマンスを発揮する鍵は“普段通りの準備”(2020年東京オリンピック ラグビー男子 日本代表 彦坂匡克選手)

2016年リオデジャネイロオリンピック、2020年東京オリンピックとオリンピック2大会連続出場を果たすなど、数々の国際大会で活躍するラグビー・彦坂匡克選手。インタビューの第二回は、世界で戦う心構えや大舞台で最高のパフォーマンスを発揮するために必要なこと、さらには悔しかった思い出などを伺いました。
言葉の端々から、笑顔の奥に秘められた闘志や、トップアスリートとしての誇りが伝わってきました。



 
Interviewer
国際大会の中で印象深かった出来事は?

彦坂匡克選手
苦しかった思い出といえば、「東京セブンズ2015」という大会です。7人制ラグビーの国際大会で日本代表としてメンバー登録されていたのですが、開幕戦の前日、練習中にぎっくり腰になってしまい、大会に出られなかったんです。活躍できなかった悔しさはもちろんあったのですが、それ以上に申し訳ない気持ちが大きかったですね。7人制の国際大会は通常12人しか選手登録ができないので、1人抜けると残ったメンバーで何試合も戦い抜かないといけなくなり、体力的に相当辛くなってしまいます。だからこそ、仲間や関係者の方に顔向けできないという思いでいっぱいでした。

Interviewer
ラグビーをやっていて良かったと思った場面は?

彦坂匡克選手
ぎっくり腰になった翌年、日本代表として出場した2016年リオデジャネイロオリンピックは、心の底から楽しむことができた大会です。予選リーグ初戦、日本は優勝候補のニュージーランドを破り、大金星を挙げました。このときは、試合前にチームで立てていた作戦が、試合本番で面白いようにはまったんです。時間帯ごとの守り方や攻め方、得点するためのセットプレーのプランなど、シナリオ通りの試合展開に持ち込めました。あの試合は、本当に神がかっているかのごとく、やることなすことすべてがイメージ通りに成功し、すごく楽しかったのを覚えています。初戦で強豪に勝ったことで勢いがつき、メダルまであと一勝に迫るベスト4という好成績を残せました。大会を通して、7人制ラグビーが注目されるきっかけにもなったと思います。



 
Interviewer
試合以外にも、国際大会ならではの楽しみなどはありましたか?

彦坂匡克選手
選手村での食事です。それまでも国際大会に出場する機会はありましたが、やはりオリンピックとなると選手村の規模も大きく、食事がとにかくおいしかった。おかげで食べ過ぎてしまい、滞在期間中だけで3、4kgも太ってしまいました。選手村で、大勢の有名アスリートたちに会えたことも良い思い出です。食堂などへ行くと、テレビを通して観たことのあるトップクラスのアスリートがたくさんいてすごくテンションが上がりました。一緒に写真を撮ってくださった方もいて、すごくうれしかったです。

Interviewer
海外遠征の際の心構えはありますか?

彦坂匡克選手
僕の場合は、あまり深く考えないことでしょうか。ただ、現地で食事がままならないとストレスにつながるので、日本食や好きな日本のお菓子をいっぱい持って行きました。あとは臭いにも気を遣いました。国によっては、ウエアなど洗濯に出して戻ってくる服がとにかく臭くて(笑)。いい香りのするスプレーなどを持ち歩いていました。

Interviewer
普段は15人制ラグビーに取り組まれていますが、7人制となる国際大会前には特殊なトレーニングが必要なのですか?

彦坂匡克選手
ウイングというポジションの特性もありますが、僕は特に平常時と違うトレーニングは行いません。もちろん7人制ということで、より瞬時に反応できるように、瞬発力を鍛えるメニューを強化することはあります。また、走る量は格段に多くなるので、持久力を高めるトレーニングを増やすこともありますね。




 
Interviewer
世界の舞台で活躍する選手に通じる共通点はありますか?

彦坂匡克選手
国際大会だからといって特別なことをするのではなく、常日頃から良い準備をし、普段通り、平常心で淡々と大会に臨める人だと思います。“大きな大会だから”と意識しすぎるとミスにつながったり、力を発揮できなかったりしがち。自分の持っている手札以上のことをしようとするのではなく、日頃の自分の準備を信じて、自分の実力を上手に引き出せる人が活躍しているのではないでしょうか。

Interviewer
国際大会を経験することで得をしたことはありますか?

彦坂匡克選手
ワールドシリーズを回っていると、強豪国の強さをまざまざと見せつけられ、全然歯が立たないこともしばしばあります。そのたびに「絶対に負けたくない」、「どうしたらもっとうまくなれるんだろう」と刺激を受け、高みを目指すモチベーションになります。また、ラグビーとは関係ないのですが、海外遠征が長くなると耳が英語に慣れてきて、リスニングの能力が上がるという効果も。帰国後に英語の試験を受けると、リスニングの点数が急激に伸びるという時期もありました。



 
Interviewer
リオデジャネイロに続き、日本で開催された2020年東京オリンピックにも、日本代表として出場されました。

彦坂匡克選手
コロナによる1年延期などもあり、リオデジャネイロの大会のときのように、しっかり準備をして臨むことができなかったという悔しさは残っています。ただ、ボランティアの方や大会運営に携わる方々の様子を間近で見ることができ、「こういう方々がいるから、僕たち選手は大会に専念できているのだ」と改めて実感しました。また無観客ではありましたが、周囲のスタッフの方も含めて熱い応援を続けてくださり、サポーターの方々のパワーを身近に感じながら戦うことができ、すごく心強かったです。ホーム開催の恩恵を肌で感じることができた、貴重な大会でした。






 

海外で戦うたびに「負けたくない」、「うまくなりたい」という強い気持ちに突き動かされます。国際舞台だからといって特別なことをするのではなく、いつも通りの準備や心構えで自信を持って臨めるように、普段から高い意識を持ち続けることが大切なのだと実感します。




国際大会ならではの厳しさや、大舞台で最高のパフォーマンスを発揮できたときの喜び、感動も語ってくださった彦坂選手。リオデジャネイロでの裏話や東京大会での葛藤など、興味深いお話が満載でした。
次回は2023年7月25日(火曜日)に掲載予定です。
地元である愛知県で開催されるアジア・アジアパラ競技大会に対する思いや期待など、熱い思いを届けます。



第三回 2023年7月25日(火曜日)掲載記事につづく>